古来、中国では文人の書斎を文房と呼んだ。書に心血を注ぎ、画を楽しみ、詩作に生きがいを求めていた古今の中国の文人にとって、机上の文具は何よりの宝であった。ここに備えられる調度品や、書画の制作に用いる道具類が文房具である。なかでも、特に重んじられた筆・墨・硯・紙の四品は、すでに宋代のころから文房四宝と称えられた。
今に伝わる文房具は、漢字の誕生以来3000年に及ぶ歳月、文人たちがよりすぐり、選びぬいてきた物である。そこには、文房具に託した文人のこころが凝縮されている。硯はそのうちの王座を占めている。どっしりした重み、特有の肌ざわり、風雅な色合い、そして長い年月に耐える永続性が文房の中心となるのにふさわしいのである。
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